第14回(19年8月)

The view from Mt. Haigamine

見えない檻

遠くに山が見えるが、すずは灰ケ峰がどちらか判らない

こうの史代(2008)『この世界の片隅に 中』双葉社. p19)

嫁いでから一度、半年前の里帰りの時にしか平地部まで降りた事がないから。

  • 実質的には長ノ木という名の「見えない檻」に閉じ込められているようなもの。
  • 閉じ込められている…というか隠れ家に潜むことを余儀なくされていたアンネ・フランクの日記の最後の日付は、この日、1944(昭和19)年8月1日であった。

「ああ…… ……… みなさんに よろしう」

こうの史代(2008)『この世界の片隅に 中』双葉社. p22)
  • 前頁の最後のコマで「朝日遊廓内」の文字を見て
  • かつ、リンの「この町から 出たこともない」という発言から

すずは「みなさん」が遊廓で働く女性であることに気づく。

  • そして「よそ者じゃし / この町から 出たこともない」は、実はすず自身にも当て嵌まるのだ。

広島で流行った柄

こうの史代(2008)『この世界の片隅に 中』双葉社. p22)

すずの「古いよそいき」の余りの布を、森田イトがリンの着物に縫い付けてやったもの。そう読者に思わせる効果がある台詞だが…

これは「大潮の頃(10年8月)」の「仕掛け」を読者に考えさせるきっかけであると同時に、(この時点では手がかりが十分示されていないこともあり)読者をも「思い込み」という思考の「檻」の中に閉じ込めている。

リンの境遇と教科書

「ここは 竜宮城か 何かかね !!!」

こうの史代(2008)『この世界の片隅に 中』双葉社. p21)

リンが無反応なのは、浦島太郎を知らないから。当時浦島太郎は教科書に載っていて、それで広まった。リンは半年しか小学校に通えていないので、それを読んでいないのだ。

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