径子の企み
「あとその お米は おみやげと ちがう」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p90)
一定期間滞在する意図で径子がやって来た事が示されている。何の為の滞在なのかは第10回で明かされる…仕掛けなのだが、誰も気づいていない気がする…
「すずさん わたしが やるよ」「わたしがやる 言うたら! あんたは 入っとり!!」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p94)
家事を担う立場をすずから取り上げて径子が自分の居場所を北條家に確保するために言っているのであって、すずの家事の手際が悪いからではない。第9回のアイロンがけのシーンではすずが手早く家事を進める様子が描かれている。
「あんた広島へ 帰ったら?」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p96)
径子の意図を正しく受け取れたのは、表情からして晴美だけ。
作者の企み
「黒村晴美です」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p93)
中巻p69)「大声にて必ず先に挨拶し」を実践する晴美。「威圧感を与へませう」とはならないが、仲良くはできた。
そしてすずが晴美と出会った日に作り直した着物と、晴美に作ってあげた巾着は、20年6月22日に二人が着用していたもの。
すずにも読者にも事情が判らない
「聞いてや お母ちゃん」「… …/ほいでも 径子 もうちいと 話し合うて みにゃ」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p90, p93)
すずも(読者も)径子とサンの会話に耳をそばだてて事情を把握しようとしている。
この時点では嫁ぎ先の義理の両親との折り合いが悪いとは知らされていないので、夫との夫婦喧嘩であるかのように見える。径子の機嫌もとても悪そうだし。
「お? 径子と 晴美が 来とんか」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p95)
久夫が来ていない、という意味だが、この時点で読者(とすず)には久夫もキンヤもその存在を知らされていない。
「はい あげます」
こうの史代(2008)『この世界の片隅に 上』双葉社. p95)
すずは晴美が夫婦喧嘩に巻き込まれて気の毒だと思ったのだろう。それで少しでも喜んで貰おうと巾着を作ってあげた。
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- 2022/02/23 – v1.0
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